牽引車について

トレーラーハウスは、それ自体にはエンジン(原動機)を持たない「被けん引自動車」です。
そのためトレーラーハウスを移動する際には、牽引車(けん引車)が必要となります。
みなさんの中には、自分でキャンピングトレーラーを牽引していろんな場所でアウトドアライフを楽しみたいとお考えの方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、トレーラーハウスの運搬に不可欠の牽引車にスポットを当ててみたいと思います。

けん引免許について

日本では、トレーラーハウス等の被けん引自動車を牽引する際には原則として「けん引免許」が必要です。 ただし、車両総重量(車両重量+最大積載重量)が750㎏までのトレーラー(ボートトレーラー等のいわゆるライトトレーラー)はけん引免許が必要ありません。

免許の種類の赤丸の「け引」がけん引

当社が販売しているトレーラーハウスをはじめ、国内で一般的に販売されている車検付きトレーラーハウスは車両総重量が2トンを超えるものがほとんどです。
けん引免許を持たない方が、車両総重量750㎏を超えるトレーラーハウスを牽引すると「無免許運転」となり刑事罰対象となりますのでご注意ください。

950登録とは

950登録(通称:キュウゴウマルトウロク)という言葉を初めてお聞きになった方もいらっしゃると思います。
トレーラーハウスをはじめ被けん引自動車(トレーラー)を牽引する場合には、車検証へ対象車両を記載する必要があります。
車検証に記載のないトレーラーを牽引した場合には、道路交通法違反となります。
車検証に記載する方式には「950登録」と「型式追加」の2種類があります。
「950登録」は、牽引する牽引車側の車検証に牽引可能なトレーラーの車両総重量の最大値を記載する方式です。
牽引車の車検証に950登録が記載されていれば、牽引可能なトレーラーの車両総重量以下のトレーラーであれば、所有者・種類問わず牽引が可能となります。
950登録ができるものは、どんなに牽引能力がある車でもトレーラーの車両総重量が、「慣性ブレーキ付きのトレーラー」で1990kg以下、「慣性ブレーキ無しのトレーラー」で750kg以下の範囲の数値になります。この数値は最大値であって、すべての車両がこの重量を牽引できるわけではありません。数値は、それぞれの牽引車の車両重量やブレーキ性能、牽引能力などの能力に応じて減少します。
前述のとおり、国内で販売されているトレーラーハウスは車両総重量が2トンを超えるものがほとんどですので、軽量なトラベルトレーラーの一部等を除いて950登録で対応できるケースは稀です。

連結検討とは

950登録できないトレーラーを牽引可能なトレーラーとして車検証に記載するには「連結検討」を行い、運輸支局(車検場)での審査を経て「型式追加」で車検証に記載されます。
連結検討とは、牽引車の車両重量、ブレーキ性能、牽引能力などとトレーラーの車両総重量、制動装置(ブレーキ)の有無およびそのブレーキ性能などを「連結仕様検討書」で計算し、牽引能力や制動能力などが安全な走行に支障がないか運輸支局で審査され、問題が無いと判断されればトレーラーの車検証に牽引車の型式名が記載されます。
連結検討にあたっては牽引車の車両重量、エンジン出力、ブレーキ性能、駆動方式等の詳細が記載された「諸元表」を自動車メーカー等から取り寄せるとともに、トレーラーについても同様に車両総重量やブレーキ性能等が記載された「諸元表」が必要となります。
当社のトレーラーハウスをご購入される場合には、お客様ご自身が牽引されるのであれば、予め牽引車の型式名等の情報をいただければ、連結検討を行いお引渡し時点でトレーラーハウスの車検証にお客様の牽引車の型式名を記載することが可能です。
なお、連結時の牽引能力、制動能力、走行安定性等から連結検討の審査に合格しない車両(軽自動車、小型車など)もありますのでご注意ください。
また、牽引車が国産車や正規輸入された車両であれば、各自動車メーカーや正規輸入代理店等から諸元表を入手することができますが、国産車であっても改造された車両や並行輸入・個人輸入された車両の場合には諸元表を入手できないケースがありますのでご注意ください。
諸元表が入手できない場合には、実車を車検場に持ち込み、牽引能力や制動能力等を実測することになります。
トレーラーを牽引する牽引車が複数ある場合は、それらの牽引車をすべて連結検討して車検証に登録しておく必要があります。

トレーラー側の車検証に牽引する車両の型式名が記載されている例

牽引装置の架装

トレーラーを牽引する場合には牽引車側に牽引するための装置を取り付ける改造が必要になります。
トレーラーハウスの場合は、連結方式にカプラー&ヒッチボールを採用しているものがほとんどです。

カプラーとヒッチボール

カプラー&ヒッチボールにはいくつかのサイズがあり、トレーラー側に装備されるカプラーのサイズに対応したヒッチボールを牽引車側に装着する必要があります。
車両総重量750㎏以下のライトトレーラーでは、2インチのものが多く用いられています。
国産のトレーラーハウスや米国製トレーラーハウスでは、2 5/16(2と5/16)インチ、欧州製トレーラーハウスではユーロ2インチ(50㎜)のものが多く用いられています。
メーカーや販売業者にカプラー&ヒッチボールのサイズを必ず確認してください。
牽引車側とトレーラー側で異なったサイズを使用すると連結がしっかり行えず、最悪の場合、走行時に連結が外れて大事故につながることがあります。
牽引車にヒッチボールを取り付けるには、牽引車側に「ヒッチメンバー」とよばれる架装部品を取り付ける必要があります。
ヒッチメンバーの取り付けは、自動車整備業者等で行ってもらえます。
輸入車や国産のRV車の一部には予めヒッチメンバーが装着されていたり、オプション装備となっている場合もあります。

ヒッチメンバーと先端の銀色部品がヒッチボール

また、車検付きトレーラーハウスには、ブレーキランプ、方向指示器をはじめとした各種ランプ類や電気式(電磁式)ブレーキを装着したものでは、その電源として、牽引車側からトレーラー側へ電源供給を行う「電装カプラー」が必要になりますので、牽引車側に電装カプラーを取り付けることが必要になります。

電装カプラーにもいくつかの方式があり、トレーラー側の電装カプラーに対応したカプラーを牽引車側に用意することになります。

電装カプラーには7PIN式、13PIN式がありますのでメーカーや販売店にトレーラー側がどちらの方式か、また各PINの配線回路についても確認してください。

さらに、一般的なトレーラーハウスの電装部品は12V仕様となっていることが多いため、牽引車が24V仕様の場合には、DC/DCコンバーター等で12Vに変圧する必要がありますので電圧についても確認が必要です。

牽引車への電装カプラー取付工事については、自動車整備業者や自動車電装工事業者へご相談ください。

なお、牽引装置の架装により牽引車の全長等の寸法に変更が生じる場合には、車検場で牽引車の「構造変更」の手続きを行うことが必要になる場合があります。

実際にヒッチメンバーと電源カプラーを架装した車両の例

まとめ

今回は、あまりクローズアップされることがない牽引車について取り上げてみました。
トレーラーハウスを牽引して運搬する場合は、運転免許の資格のみならず、牽引車やトレーラーハウスについても、車検証への記載事項の追加等の道路運送車両法上の手続きや牽引車への改造工事が必要になることをご理解いただけたのではないかと思います。
いずれも、トレーラーハウスが公道を安全に走行する上で大変重要な事項です。
トレーラーハウスの運搬中に、万が一にも事故を起こさないためにも今回ご紹介した内容が参考になれば幸いです。

原案:中村
執筆:吉田
校正:野坂